【355日目】最後の日、そして始まり
夜Peteの仕事の後、 新しいファミリーの元へ引っ越すことになった。
正真正銘、最後の日。
泣いても笑っても、 これがこの家で子どもたちと一緒に過ごせる最後の一日。
まとめのパッキングと掃除、洗濯を午前中に終えて、 午後は子どもたちと一緒に過ごす。
一年間住んだお部屋にも、ありがとうを伝える。
お昼は近くのチャイニーズレストランでテイクアウトしてみんなで 食べた。
Peteが、
「最後の食事はみんなで揃ってするべきだ」
と言って、 仕事の手伝いに来ていたJennyに家に帰るよう言ったそうだ。
そしてPete自身も、 何とか一旦帰って来れるように努力してくれたらしい。
だけどどうしても難しく、 子どもたちと3人で食べることになった。
本当は火曜日はPeteのデイオフなのだけど、 いつも火曜に手伝いに来てくれる友人の奥さんが亡くなってしまい 、急遽仕事に行かなくてはけなくなってしまったらしい。。
だけど、夕方帰ってきたら会える。
今は、子どもたちとの最後の時間を楽しもう。
いつもは部屋で音楽を聴いているティーンエイジャーのJenny も、
「私も参加するわ」
と言って、3人で家全体を使ってかくれんぼ。
何回も何回も繰り返し遊んだ。
年齢も何も忘れて、いっぱいはしゃいで、いっぱい笑った。
その後は、ボードゲーム!
Kalleが選んで持ってきたのは、 フィンランドを代表するゲーム、Afrikan tähti(african star)というすごろくゲーム。
初めてこのゲームをしたのも、ここで、この家族とだったなぁ…
時間も、残った仕事も、携帯での連絡も忘れて
今目の前のこの時間を、めいっぱい純粋に楽しんだ。
その後は、monopoly(アメリカ版)。
みんな初心者な上にルールも複雑、 そして説明の英語が難しすぎて全くわからない。。
最終的に、Jennyと2人で、説明書とにらめっこしながら、 何となくゲームを進めた。
あっという間に時間が過ぎて、
残った作業をこなしつつ、Peteを待つ。
そしてついに……
Peteが帰ってきた。
今日ほど
「まだ帰ってきてほしいくない…」
と心から願ったことはない。。
彼に会えて家族全員揃ったのは嬉しいけれど、
それは同時に、 もうすぐこの家を出て行かなければならないことを意味するから。 。
ファミリーから、小さな贈り物を貰った。
Peteの会社のTシャツと、シルバーのネックレス、 ニョロニョロのストラップ、 そして子どもたちが書いてくれた手紙。。
goofin recordsのTシャツは、 家族全員持っててみんなよく着てるから、 私もほしいなぁと思っていた。家族の証。
ニョロニョロは、昨日Jennyに聞かれた「 ムーミンキャラの中で誰が一番好き?」という質問と繋がった。
家族全員のサインもある。
あったかくて、嬉しくて、また泣いた。。
私も、写真たてに入った家族と一緒に写った写真を渡す。
この家に来た初日に撮った、初めての家族写真。
裏には、手紙も書いた。
Jennyはうるっとしながら「ありがとう」と言ってくれた。
既にいくつかの写真が飾られているピアノの、 真ん中のスペースを空けてくれ、そこに写真を置いてくれた。
「We are family.
You are always the part of our family.
Always. Also after you go back to Japan.」
リビングの真ん中に、いつでも私がいる。
私がこの家からいなくなっても、日本に帰った後もずっと。
すごく嬉しくて、なんだか安心して、寂しさが少し和らいだ。
みんなでアイスクリームを食べて、庭に出て座って話す。
Peteは、
「君が行きたいタイミングで僕たちも出発するよ。 今すぐ行きたかったら今でもいいし、 1時間後がよければそれでもいい。君のタイミングを待つよ」
…気持ちはありがたいけど、今の私には難しすぎるよ。。
だって、行きたくない。。
“行きたいタイミング”を待ってたら、今日もこの家で泊まって、 明日もまたここで暮らして…
になっちゃうよ。。
寂しい、悲しい、つらい……
だけど、わかってる。。出て行かないといけない。。
家族の予定(今月から始まるKatiの家のリノベーションで、 私の部屋を使う)もあるし、
今この瞬間、私が来ることを待ってくれているファミリーもいる。
強くならなきゃ……
弱いままでいたい、
泣いて、やだって駄々こねて、引っ越しを拒否したい、 なかったことにしたい
初めて本気でそう思った。
…受け入れたくないものを全力で拒否できる子どもが、 心から羨ましい。。
家の前でもまた写真を撮り、
そして、最後のドライブ。
今の家があるKäpyläからMunkkiniemiまでは、 車で15分ほど。
同じヘルシンキ市内で、そんなに遠くはない。
だけど、やっぱり寂しい。。
明日からは、この家には帰れない。
昼間KatiやKalleと過ごすことも、
Peteがパソコンとにらめっこしてる姿を見ることも、
Jennyと日本の話をすることも、
もう「日常」の中ではできなくなる。。
なんだかんだ、いっぱい葛藤したし、 ぶつかり合いも何度かあったけど、
でも今やっぱり、この家族と出会えて良かった。
本当にありがとう。
この一年の全ての思い出が、今思い返すととても大切で、 愛おしい気持ちでいっぱい。
”We are family“が、 離れててもこれからもファミリーであり続ける合言葉。
Pete、Jenny、Kalle、Kati、
Kiitos paljon kaikkille!
一年間本当に、本当に、ありがとう!!
そして涙のハグを終えて、
アパートのエレベーターで見送られ、
30秒後には、新しいファミリーとの新しい生活。
この扉の向こう側に、 私が来るのを楽しみに待っていてくれてる子どもたちがいる。
1ヶ月半、よろしくね!